きな臭い時期の中、読み終えたのが『失敗の本質』。
日本軍がなぜ破れたか、戦術・戦略的観点ではなく、組織がどうであったかから検証した本です。
2章、3章を読み、私が勤める組織が日本軍と同じような状態になっていると痛感しました。
たぶん私が勤める組織だけじゃなく、保育業界も同じなんじゃないかと思います。

- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
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神話的思考と人情論。
私は新卒で児童館職員になったのではなく中途採用です。
一般企業に勤めていた経験があります。
また児童館職員になるための保育士勉強期間はアルバイトをしていた時期があります。
一応“稼ぐ”ことはどういうことか経験してきました。
でもうちの組織は“稼ぐ”ことがタブー視されています。
公共施設だから営利目的が駄目という話ではありません。
“稼ぐ”というのは少ないコストで効率よく回すと言い換えてみてください。
「子どもがかわいい」という神話的思考。
大学や専門学校で学んだ人たちって「子どもがかわいい」、「子どもが好き」という教えにガッチリ染まっています。
学ぶ対象が乳幼児中心なんでしょう。
より年齢の低い子がかわいいようです。
確かに赤ちゃんかわいいですよね。
トテトテと歩く幼児思わず手を貸したくなりますよね。
守ってあげたくなる感覚=子どもがかわいいと思っている方が、とても多いと感じます。
なので年齢が上がってきてやんちゃな子は苦手、どうしたらいいかわからないという人が多いと感じます。
成果が見えないから「頑張っている」が評価点。
成果が目に見えないのが保育の仕事。
仕事の評価は準備にどれだけ時間をかけたかという点が非常に大きいと感じます。
みんなでバーっとやりましょう!より、これは私の仕事だからと持ち帰ってやってくる人が多いんです。
持ち帰ってする仕事なので、大人数でする遊びではありません。
手遊びの仕込みとか工作の準備とかです。
内容はともかく、自分の時間を削ってまで一生懸命やっているね、の評価になります。
自分の時間を削ってまでするのが良いなんていうのは人情論的な評価じゃないでしょうか?
勤務時間内で終わらせましょうよと私なんて思いまし、実際私が行事を考えるときできるだけあるものを使い、わざわざ大掛かりな準備はしません。
行事で作る工作おもちゃって家に帰ればゴミになると思うし、そういった準備で時間をかければかけるほど楽しんでくれるハズという押し付けがましい思いにとらわれてしまうのが個人的な感想なので。
鬼ごっことか運動遊びって準備もいらないし、参加者の様子を見てすすめる事ができるのでとてもいいと思うんですけど、軽く見られがちなんですよね。
『失敗の本質』から何を活かせるか?
日本軍は科学的根拠を無視した神風という神話的思考から作戦は必ずうまくいくと考えられていました。
科学的根拠をもとに作戦の変更を求めても、必勝の精神に欠けると更迭されるという声の大きいな人の意見が通る組織。
で、その声が大きい人が唱えた神話的思考による作戦が失敗して一時的に現場から離されても、必勝の精神が人情で評価され復帰していることが多かったとあります。
偉そうな人が、根拠もなく偉くなっていく。
自分がそうやってきたからという自分だけの尺度で図るベテラン職員たち。
その尺度の中ですり減っていく若い職員。
そろそろいい加減、保育士課程における乳幼児偏重を改めるべきじゃないでしょうか?
子ども全体を扱う資格として、学齢期の子どもについても学ぶべきと思います。
また、今は職員一人に対しての仕事量や責任がとても大きくなっています。
なので一人の頑張りを賞賛するより、組織で動けるように分担する差配が主任や所長には求められるべきです。
戦略目的=対象はだれか?
保護者のニーズが大きくなっているのも現状です。
子どものためと、保護者のニーズの板挟みで、何をすべきかが問われています。
その一方で何かをやめるということには消極的で、負担は増すばかり。
「ここではこうする」といった判断をすることも主任や所長のするべきことでしょう。
さいごに。
愚痴っぽく、私の組織や業界の話をしてしまいましたが、『失敗の本質』は組織論を学ぶに当たって名著です。
知らないのは本当にもったいない、読むべき本です。
これだけしっかりとした組織の検証があるのに、それを活かしていない業界があるのが残念でなりません。
保育業界は人手不足が深刻です。
生き残る組織づくりが必要だと思うところで、今日は締めさせて頂きます。